<引用> マンスリーみつびし 2012.12.30 小林勝
マンスリーみつびし 京都 秋物語
2012・10月号から引用
北山時雨(きたやましぐれ)が降り始め、秋の訪れを知らせると、
澄んだ空気が一気に冷え込み、京都の町は燃えるような紅葉に包まれる。
幻想的な色彩を放つ美しい風景は、訪れる者の心を奪う。
水野 克比古(みずの かつひこ)さん、京都の写真。
<引用> 撮影 水野克比古さん
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11月初旬~12月初旬、1年を通して最も多くの人が京都を訪れる。紅葉名所が多く約1か月の間、必ずどこかで紅葉を楽しめるのが素晴らしい。
「京都の紅葉は、高雄の神護寺の金堂前のもみじに始まり、下鴨神社の糺すの森(ただすのもり)のもみじで終わります。標高の高い所から徐々に下るのです。
京都は四方を小高い山で囲まれた盆地ですから、夏はゆだるような蒸し暑さ、冬は耐え難いまでの底冷えの寒さになります。
この京都特有の厳しい気候風土が、燃えるような紅葉を生む。数多い落葉広葉樹の中でも、最も美しいのがカエデ(楓)です。京都の紅葉は、やはりカエデのもみじにつきます。」
と言うのは、40年以上にわたり、京都の風景を撮り続けてきた写真家の水野克比古さんだ。
水野さんは出版物がまだモノクロだった時代に、京都の紅葉をいち早くカラーフィルムで広く世の中に伝えた第一人者である。
「京都では平安京遷都以来、1200年の歴史の流れの中で -略- 」
森羅万象(しんらばんしょう)の自然空間と、人が作り出した建築物や庭園などの人工空間。このふたつが織り成す組み合わせの妙(みょう)が京都の紅葉をより際立たせ絵になる風景をつくっていると、水野さんは言う。
「花鳥風月(かちょうふうげつ)の心とでも言いましょうか、自然を敬い自然とともに生きてゆく。これからも大切にしていかなければならない日本の心が風景の中に宿っていると思います。」
ここ数十年続く温暖化が京都の紅葉に及ぼす影響を心配する人もいるというが、水野さんいわくそれは杞憂。その年の気候によって差はあるが、確かに紅葉が始まる時期は遅くなった。しかし、暑い時期が長く続いた後に急に冷え込むせいで紅葉はかえってその鮮紅色の色合いを増しているという。
地中から水分や養分を吸い上げる力がなくなった時、木々の紅葉は始まる。根の張っていない若い木は早く、根を張り詰めた老木はゆっくりと時間をかけて色づいてゆく。そして、それぞれの樹木が刻々と表情を変えながら、季節はやがて晩秋へと移ろう。
最近はデジタルカメラを手に撮影を楽しむ人が急増している。そこで、写真撮影で最も大切なことを水野さんに尋ねたところ、
「カメラを持って、そこにいること」という答えが返ってきた。撮影に出かけた回数だけ、素晴らしい光景に出会う機会が増えるからだという。
「写真撮影とは未来へと続く時間軸の中で、今という一瞬の時を自らの感性で切り取る行為。全ては一期一会(いちごいちえ)の光景です。 -略- 」